残念ながら来月号は休載です。
第1なのに1番じゃない
水銀燈の回想から始まります。物言わぬ人形の部品で埋め尽くされた空間を歩く彼女は、おそらくは生まれたばかりなのでしょう。背中に翼が生えていません。正確に言うと、ちょうど生えてくるところのようですが。硬い土に埋められた種子のように、ボディを突き破り芽吹こうとしています。痛そう。
足元に広がる「お姉さま」は、至高のはずなのに「第1ドール」と付けられた水銀燈にとって「失敗作」と一蹴できるような存在ではなかったのでしょう。お父様は至高の少女にしか興味が無い。妹の誕生は己の死刑宣告に等しい。後々彼女が好戦的で悪辣になっていくのも無理はありません。
機械のような道具の場合、昔からあるというのは時代遅れの旧式であることを意味します。兄より弟が優れていて当然の世界です。そして残念なことに……薔薇乙女はこちらに近い。少なくとも、創造主にとっては。
黒い翼と逆十字を纏う前の水銀燈には、水子同然の「お姉さま」に名前をつけるような哀れみがあったようです。一緒なら寂しくない、私も貴女も必要とされている。そんな彼女が決定的に捻くれたのは……やっぱり金糸雀が生まれた時でしょう。
「ゼロ」につけた名前も既に忘れてしまいました。至高となるべき自分とお父様以外はほとんど目に入っていないのでしょうか。「目の敵」はその「ゼロ」に囚われてしまっているようですが……。
それもまたモガだね(よくわからないけど)
「そうだねマスター、モガだと思う」
「マスターがモガだと思うならモガなんだと思う」
夢の庭師の仕事はあくまで夢を育むお手伝いをすること。自分のあるべき姿を決めるのはあくまでその人自身。
にしたって受け答えがあまりに無関心で無骨すぎませんか。どうせなら先週みたくモダンガールをエスコートしてみなさいよ王子様よー。
そのくせ借りた双眼鏡は失くしたり壊したりしないようにと口うるさい。
ただそれでも、「自分の夢は自分で守りぬく」と決意した華を目にした表情は柔らかいものでした。
めかしこんで夢のほころび探しに出発したものの、しゃべる風呂敷を担いでゼイゼイ言っている華は明らかに怪しい。探偵どころか追われる立場である。
そんな彼女を呼び止めたのは憲兵ではなく、結菱家のお屋敷で働いているお敏さん。お給金が出る度に会いに行ってる娘が行方不明になったという。穏やかじゃない。13階の事件は人さらいだとの噂も立っているのでしょうか。
わがままで済ますにはあまりに腹黒いフェアリー
外に出たいと駄々をこねる翠星石、まるっきり幼児である。雛苺のこと馬鹿にできんぞお前。
お坊ちゃんの車に乗ってからも「男女が2人きり」「逢引日和」と自称上級会話テクで菊の心労を増やしていく。
他の人に見られちゃいけないマスコット的な存在が主人公について行ってトラブルに……という女児アニメによくある展開に近いですけど、こんな悪徳な妖精さんは滅多にいないと思います。いてたまるか。
もしやあの駄々こね、こうすれば連れてってもらえるという打算に基づいた演技だったのでは……。ゴネ得。
こう、セコい翠星石を見ていると、菊にはすっかり心を許しているんだなあと思います。
巡りあう姉妹×2
夢のほころび探しのために実は坊ちゃまと華は待ち合わせをしていたのでした。
あたかも「今度は私が姉さんの男をとってやったわ」とばかりにねんごろ~に話を婉曲させる華は、やっぱり故郷を離れるきっかけの一件を深く根に持っているようです。
というか坊ちゃまもざっくりと肯定しちゃわないでくださいよ。そりゃ華の本音も「そんな男はやめておけばいいのに」となりますよ。
再会した姉妹は菊と華だけではありません。
双子の対人形、翠星石と蒼星石が遂に巡りあいました。
マスターは異なってしまいましたが、幸いにも全てのドールが目覚めてはいない、7番目に至っては生まれてもいない。いまのところ敵同士になる心配はなさそうです。
手を重ねあい2人でアイスキャンデーを頬張る翠星石と蒼星石。のどかで心休まる光景ですが、のんびりはしていられません。夢のほころびを放置すればこの優しい時間も街もろとも崩れ去ってしまうのですから。
特に印象的だったのは、真紅を真っ先に思い出したという翠星石に対する蒼星石のこのセリフ。
「へぇ……僕の名前よりも?」
はたして本心からの妬み嫉みなのか、それともおちょくってみただけなのか。ともかく翠星石にはだいぶズシンときた一言のようで。
水銀燈に関しては「黒くてバサバサしたやつ」程度の記憶ですが、黄色いおちびとちびいちごに関してはどの程度覚えているのやら。
そういやこの双子はどちらも結構な毒舌というか、中々言葉が容赦無いですよね。
翠星石は悪口のレパートリーが豊富でマシンガンのように毒を炸裂させるのに対し、蒼星石は相手を試すかのようにさらっと、ややキザな物言いをする。でもってちょっと口うるさい。
いや、水銀燈や真紅も悪口や皮肉に通じているから……7人中4人が言葉に毒を盛るのが得意なのか。綺麗な薔薇には棘がある、と。
なお翠星石とも蒼星石とも契約できなかった坊ちゃまは思いっきり凹んでいる模様。ドールにかける信念は本物なのでちょっと気の毒になりますね。それ以外を犠牲にし過ぎだけど……。
どうやら「ローゼンメイデン0」の主人公は菊と華、翠星石と蒼星石、この2組の姉妹のようです。
鏡合わせのように対照的な姉妹たちは、果たして夢のほころびを見つけ出せるのでしょうか。そして、己の夢と生き方にはどう立ち向かうのか。
世にも奇妙な生き人形
夢を追うふたつの姉妹など知る由もなく、帝都のとある見世物小屋では「世にも怪奇な歌う人形」が展示されていました。病の娘を案じた父が祈りを込めてこしらえただとか、中身には娘の命が詰まっていて恨みつらみが聞こえてくるだとか。場所が場所だけに胡散臭く聞こえてしまう。
でも確かにそんじょそこらの人形とは明らかに違う。薔薇乙女の隠された姉妹と言われたら納得してしまいそうなくらい。はたして、これが「ゼロ」なのか……?
ところで行方不明になった人々はどうなったのでしょう。「ゼロ」と無関係とは思えません。夢だけが遺された「ゼロ」ですが、もしかしたら寂しがっているのかも。
生きた人形の仲間を欲しがっていても、おかしくはないでしょう。
さて、お敏さんの娘さんはどこに……?
で、これだけ気になる引きなのに次号休載ですか……。なんて殺生な。
Rozen Maiden―PEACHーPIT画集 (愛蔵版コミックス)
Rozen Maiden 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)