小説版「星のカービィ」(通称「つばさカービィ」)の第1巻です。もうすぐ発売される最新刊「星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻」の表紙がなんだかすごいことになっていて気になったので、先に前のお話を読んでおきました。約200ページの小説ですが、文字が大きく挿絵も多いので1時間ほどで読み終えました。もうちょっと早く読める人も、逆にもう少し時間がかかる人もいるでしょう。以下、感想を書いていきます。
星のカービィ あぶないグルメ屋敷! ?の巻 (角川つばさ文庫)
星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)
この小説で特に好きになったのは、カービィやデデデ大王の性格がゲームの「星のカービィ」に近いところです。カービィは食べることが大好きです。ワドルディと話しているときにも、いつの間にか食べ物の話題に夢中になってしまいます。ワドルディがなんとか会話を本題に戻そうとしても、また食事の話題へとそれてしまう。
カービィは宇宙をまたに大活躍しているみんなのヒーローですが、あまり人の話を聞かないところもあるんですよね。*1悪者と戦うときは勇ましいカービィでも、平和な毎日ではこんな感じなんでしょうか。ゲームの冒険ではあまり目にしない姿が見られたのが嬉しかったです。
デデデ大王は乱暴者でワガママ。いつも偉そうでしかも怒りっぽい。カービィのことはライバルだと思っていて敵対心をむき出しにしていますが、それでも食いしん坊どうしで心が通じ合うのか、食べ物が絡むと意気投合する間柄です。夢の泉やカービィ64やトリプルデラックスなどのゲームではカッコ良い所を見せたりしますが、特に大きな事件がないときはやっぱりこんな具合なのでしょう。
元の地名*2を書き換えてデデデだらけにしてしまうのも自称大王らしいです。食いしんぼうなところにもクローズアップされています。初代カービィで食べ物を盗んだり、スパデラでグルメレースをやっていたりしてましたからね。
まだ大事件が起きていないときのカービィやデデデ大王がゲーム版に近い性格で描かれていて、読んでいて気分がほっこりしました。
この2人に振り回されるワドルディとメタナイトはちょっとかわいそうでしたね。カービィは無邪気でおきらく、デデデ大王は威張り屋で乱暴。それぞれ違ったタイプで自分勝手です。パフェスキー夫人の屋敷に招かれる後半はメタナイトが話を引っ張っていて、彼が主人公のようでした。プププなおつむのカービィやデデデ大王では謎を探るのが難しいのでしょう。
パーティ会場で「デデビィ」と一緒にいたせいで屈辱を味わった場面は、彼には申し訳ないですが笑ってしまいますね。恋人とはひっそり静かに時間を過ごしたいタイプっぽいですもんね。
カービィたちメインキャラだけでなく、ブロントバートやサーキブルなどのザコ敵たちも少し登場します。描かれはしませんでしたが、おそらくパフェスキー夫人の館の来客の中にも、ワドルドゥやキャピィといった面々がいたのではないのでしょうか。
カービィの特技のコピー能力を使う場面もありました。カービィといえばすいこみとこれですよね。ただし敵キャラとのバトルシーンは殆どなく、トラブルを解決するためにコピー能力を活用しています。手強いボスとの戦闘は、次巻以降で見れるといいな。ただし、カッターで木を切り倒して橋にする場面はちょっと疑問があります。だって3人とも飛べますよね? 橋をかけなおす必要はなかったような気がします。
文章は簡潔で、漢字には全てルビ(読みがな)が振ってあるので、まだ文章に慣れていない小学生でも読みやすいと思います。ただし「~た。」で終わる文が連続してしまうのは、ちょっとテンポが悪いかもしれません。
物語のテーマは「食べ物は美味しく食べよう」「料理を出してくれる人に無茶な要求をしてはいけない」というシンプルなものでした。食い意地の張ったカービィやデデデ大王にはうってつけだと思います。カービィはパフェスキー夫人を根っからの「悪者」と認定したのではなく、同じく食べるのが大好きな者として美味しい食事のありがたさを分かってもらおうとしたんですよね。結果的には十分すぎる罰となっていましたけれど。
ゲームではそこまで掘り下げられない、いつものプププランドが描かれている一冊です。世界や宇宙を揺るがすような大ピンチが起きるわけではありません。*3食いしん坊なカービィとデデデ大王、そして健気な苦労人のワドルディとクールなメタナイトによるちょっとした冒険といったところでしょう。「星のカービィ」が好きな人に向けた小説としては、シンプルに楽しい内容になっていると思います。
小学生を対象にした文庫本ではありますが、カービィファンであれば気にしなくて良いのです。書店にはほとんど置いていないのでネット通販をお勧めします。
小ネタ
メタナイトが「デデビィ」に「頭だけ飛び回ったら周りの人が気絶する(から気をつけろ)」と注意する場面があります。
……この半年後に発売されたゲームのラスボスがそれをやってくるとは誰も予想がつかなかったでしょうね。あとメガタイタンとかトグ・ロ・ガラーガとか。
星のカービィ あぶないグルメ屋敷! ?の巻 (角川つばさ文庫)
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