「ローゼンメイデン0―ゼロ―」第1階(ウルトラジャンプ2016年3月号)感想 まさかの舞台でまさかの彼女

 

ウルトラジャンプ 2016年 03 月号 [雑誌]

ウルトラジャンプ 2016年 03 月号 [雑誌]

 

  ヤングジャンプでの完結から2年、前日譚の新シリーズがスタートしました。今度の掲載誌は月刊誌のウルトラジャンプです。

 今月は表紙に真紅がいるので分かりやすい。付録にはかつてゲストの方々(矢吹健太朗先生とか小畑健先生とか)が描いたイラストをまとめた小冊子と、PEACH-PIT先生のミニクリアファイルがついてきます。雑誌の付録としてはお洒落な装丁なのでオススメ。

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「Rozen Maiden」が2002年から2007年にかけて連載されていた第1部、「ローゼンメイデン」が2008年から2014年にかけて連載されていた第2部&第3部となります。

 

ultra.shueisha.co.jp

 ローゼンメイデンゼロ第1話はウルトラジャンプ公式サイトにて公開中です。

 

 舞台は大正時代の日本。欧米由来の文化が徐々に浸透していき、オシャレで高尚なものとして憧れを抱かれていた時代です。「ハイカラ」という言葉が流行したのもこの時期ですね。

 ロリータ&アンティークを体現したかのような衣装の薔薇乙女は、薄暗く閉ざされていた島に咲く可憐な花として映ることでしょう。大正ロマンの嵐で咲き誇る薔薇乙女の姿に期待です。

 

人間側の主人公……かどうかはまだ分かりませんが。とにかく今回の中心人物となったのは、お屋敷に勤める女中の「菊」。田舎訛りが抜けずに少々口下手で、皿を何度も割ってしまうなど鈍くさいところもあり、自信を持てずにいるピュアな若者です。

 お国言葉を誤魔化すために「です」をつけるも、それだけで東京に馴染めるわけもなく。腹から声を出せず上司からは小言を言われ続ける毎日を過ごしておりました。

 上京したばかりで垢抜けず緊張で会話が上手く行かない匙加減が絶妙というか、いやなリアルさに溢れた人間の描写は一級品ですね。独り言は流暢だけど他人を前にするとガチガチに固まる辺りがまたいたたまれない。

 

 そんな菊が屋根裏部屋で一体の人形を発見。ええ、もちろん薔薇乙女です。

 

 さて、初陣を華々しく飾るのは……。

 

 

 

 

 まさかの翠星石。

 

 確かにトップクラスに人気のあるキャラですが、よもやトップバッターに踊り出るとは思わなんだ。雑誌の表紙も扉絵もキービジュアルも全部真紅だったじゃん! とはいえ、ここで真紅から出てきたら昔と同じなんで、こうして不意をついてきたのでしょうね。これはこれで嬉しいサプライズ。

 

 翠星石は野ざらしのまま眠りについており、鞄も人工精霊のスィドリームも見当たりません。それはともかく目を閉じて座り込む翠星石が可愛い。きっと「深窓の令嬢」のステレオタイプに当てはまるようなおしとやかなキャラなんだろうな~(棒)。

 

 ねじをまかれて目覚める翠星石のシーン、うなだれたまま浮かび上がる様が人形感ありますね。人間と人形の違いが大事にされている。

 そんな翠星石はとても人見知りで臆病な小動物系。菊としゃべることもなくベッドの下に潜り込んでしまいます。そのまま丸一日出てくること無く、警戒心MAXで潜伏中。菊は同僚からも人形からもぞんざいに扱われ、物の怪でも自動人形でもこの際構わないと愚痴をこぼし始めます。

 妹の「華」は立派なお塔「遥雲閣」で活躍する器量よし愛嬌よしのエレベーターガール。それに比べて自分は愚図でのろま、お仕えするあこがれのお坊ちゃんにも話しかけられず、姉妹なのにこうも違う。自分は一体何なのだと。

 

 コンプレックスが溜まりに溜まり自己卑下に走るのがまた、見ていて居心地の悪さを覚えるといいますか。人に当たらないだけ初期のジュンよりはマシですけれども。

 

 そんな迷える子羊に翠星石が答えます……。

 

 

 

 

「負け犬」と……。

 

 

 

 

 新シリーズ初の記念すべき台詞が「負け犬」ってお前……。相変わらず口が悪すぎる。しかもこれに留まらず「あばずれ」とまで言ってのけている。若い娘を罵りながらベッドの下でキャラメル(菊によるとお高かったらしい)を頬張る姿は上品なお嬢様からは程遠い。「深窓の令嬢」がダイナミックに窓を割りながらクロスチョップしてきやがった。

 

 ローゼンメイデンが世に出てから13年以上が経過し、翠星石登場からは12年ほどが経ったのですが、彼女のキャラ付けは2016年でも非常に鮮烈なままだと思います。

 少女たちのあこがれを絵に描いたような愛くるしい緑のドレスを纏い、とても人見知りでおとなしい印象を受けるが、一方で大変な毒舌で悪口のレパートリーに事欠かない。暴言の後ろに「です」をつける独特な口調の持ち主で、相手を思いやる優しさしれっと謀る腹黒さを併せ持つ。

 プリズムのごとく様々な色の光を映しながらも、そのどれもが「翠星石」と認識できる、名キャラクターではないでしょうか。

 

 ともあれ、菊はびっくり仰天。人形が動いて喋っただけでも怪奇現象なのに容赦なく「負け犬」と突き刺され、あまつさえせっかくのキャラメルを盗み食いされているときた。まるで藪からキングコブラが出てきたかのような。

 

 そんな大騒ぎで上司のお敏さんに叱られるのですが、ここで「ちゃんと腹から声が出る」と指摘されるんですよね。翠星石の耳にもそれは届いており、「ちゃんと話せていてすごいです」と菊を褒めているんですよ。そして他に必要なのは勇気であると。でもって安直に「ですです」付けるのをやめるですと。自分のは「歴史ある『です』」だからOKだそうな。まあ菊の「です」が急ごしらえなのは明白だし現に上手く行ってないし。

 

 できないことをできるようにしろ、よりも先にできることに気が付かせる。そこまできて後は気持ちの問題であるとアドバイスする。確かな根拠の後に精神論を付随させているんですよね。真紅とジュンのときもそうでしたが、人間の励まし方が丁寧で素敵。

 

 でもキャラメルは弁償してくれよ!

 

 菊は職場でも明朗に喋れるようになり、坊っちゃんともお話できてとりあえず一件落着です。みんな思ったより優しく(そもそも菊が避けていただけだしね)、お敏さんとも打ち解けられたとか。抱き合うときの翠星石の顔が柔らかくて、思いやりあるキャラだと分かって良い。

 筆舌に尽くしがたいですが、菊の表情がとても感情豊かで愛らしいですね。翠星石を見つけたときの、童心に帰ったかのような笑顔とか。声が出ずにしどろもどろの困り顔とか。菊に限らず、表情のみのカットはいずれも秀逸。

 

 

 さてそんな有毒愛玩生物翠星石ですが、どうも記憶を失っているようでして……。菊の口から耳にするまでは自分の名前も思い出せず、「薔薇乙女」の名称も忘却しておりました。こりゃおそらく蒼星石のことも覚えてないな。あと「第3ドール」とも名乗っていませんね。

 かつて真紅が、鞄での眠りは薔薇乙女にとって重要と言っていましたが、前述したように翠星石はそのまま座り込んで意識を失っていました。どうやら無関係ではなさそうだ。

 

 名前は便宜上の些細なものだが必要だから大切にしたほうが良いと、そう語った真紅自身は大丈夫だろうか。

 

 

 ヒキコモリお坊ちゃんのお目当ては薔薇乙女とのこと。冒頭の列車のシーンで奇妙な紳士と面会している人物がそうなんでしょうか。

 その坊っちゃんもよく行く遥雲閣で、ひとりのエレベーターガールがあるはずのない13階にたどり着いてしまったところで第1階は終了。彼女が妹の「華」でしょう。

 

 薔薇乙女との出会いを通じて己の美醜と向き合うストーリーはやはり華麗ですね。次に出てくるのはどのドールやら。7人全員が同時に揃いはしないはずですが、さてはて。

 

ローゼンメイデン 0 -第1階- : 言いたい放題ローゼンメイデン

http://blog.livedoor.jp/tomo318i/archives/52457355.html

 10年近くに渡りローゼンメイデンについて語り続けているサイト様です。原作やアニメ版の感想はもちろんキャラクターや設定の考察、フィギュアなどのグッズレビューや小ネタも様々。

 ローゼンメイデンの歴史の参考書と呼べるほどにボリュームと熱量と愛に満ちています。 

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tsukimajiro.hatenablog.com

 

 

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