「星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻」感想 トモダチをめぐる充実の一冊

 既刊はまだ「あぶないグルメ屋敷」しか読んでいませんが、これは気になりすぎるので購入。店にはほとんど置いてないと前に書いたんですが、近所の某チェーン店でフラゲしちゃいました。大きい店になら置いてあるかも。

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 プププランドにおめおめとふらっと帰ってきたマホロアから「トモダチ」を助けてほしいと頼まれたカービィたち。

 過去の所業を知るカービィたちは最初は怪しむものの、やはり断りきれず「トモダチ」のいる鏡の大迷宮へと旅立つのでした。

 途中でエリーヌたちのいる世界に迷い込みつつも、大迷宮を進んだ末に深部に到達。そこで彼らを待つ「トモダチ」とは……。あらすじはこんなところです。

 

先にほぼネタバレなしの総評

 あくまで「原作ゲームに登場するキャラが登場するオリジナルストーリー」ですが、今回は明らかにゲーム版の内容が強く意識されています。

 特に存在感が大きいのは「星のカービィWii」「星のカービィ トリプルデラックス」「タッチ!カービィ スーパーレインボー」の3作品。

 「トリプルデラックス」の要素に関しては、ゲーム内のストーリーのみならずMiiverseで公開された裏設定もが汲まれているため、未プレイの人にとっては少々分かりにくい、というより感情移入しにくいかもしれません。

 

 近年の主要キャラたちの、もしかしたらあり得る物語を、原作設定を踏まえながら綴った一冊です。

 これが公式エピローグというわけではありませんが、ゲーム作品の要素を小さなものまで組み込んでいることもあり、こういう後日談もあったろうなという説得力はかなり高い。「友達」を柱にして各キャラのやり取りが繰り広げられています。

 

 単体の小説としてどうこうという評価はいまひとつ下しにくい、というか昔からカービィシリーズを遊んできた私には下せません。マホロアやタランザ、エリーヌやクレイシアが好きな人ならぜひ手にとって下さい。お人好しなくらい友達思いのカービィが見たい人にもオススメ。

 

 文章は平易で文字も大きめ、挿絵も多いため読了までに時間はかからないと思います。1時間から2時間弱くらい。

 

 以下により詳しくネタバレを含んで感想(と妄想)を書いています。今回はキャラクターごとに分けました。

星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)

星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)

  • 作者: 高瀬美恵,苅野タウ,ぽと
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2016/02/15
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 

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星のカービィ 大迷宮のトモダチを救え!の巻 (角川つばさ文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マホロアについて

 ジャンジャジャ~~ン!! 今明かされるショウゲキのシンジツゥ。いやぁホントーに苦労したヨ、マヌケな旅人演じてつまらない協力までしてサァ。

 しかしキミはタンジュンだよネェ、ボクの口から出たでまかせを、ゼンブ信じチャウンだからサァ!ウッヒヒヒヒヒヒww

 トモダチを助けるゥ~~? ココロをいれかえた~~? wwwウッヒャハハハハハハハ!! 楽しかったヨォwwwキミとのトモダチごっこォ~~!!

 

 まったくこりない悪びれない、とんでもない畜生でしたこの野郎。ここまでくるとディメンションミラーからただの色違いしか出てこないのでは。

 

 このマホロアには本心を分かち合える友人がいたことなどないのでしょう。他人は全て望みを叶えるための道具とみなしていそうです。

 「トモダチ」は相手を利用するための方便で、自分を好きになったなら「トモダチ」として尽くすのが当然。心もつ船のローアも邪悪に染めてしまう。

 

 ただし敗走中にカービィの言葉で一瞬だけ立ち止まったところからするに、心が通じ合って楽しく遊べる親友にあこがれている側面も確かにありそうですね。

 「星のカービィWii」では無限の力を手に全宇宙の支配者になろうとし、この小説でディメンションミラーに願ったのは「誰にも負けない力」。

 

 もしかしてこいつ、呆れ返るほどの平和とは程遠い環境で生きてきたのでしょうか。ハルカンドラの荒廃っぷりとの因縁は浅くないのでは。生き残るためには誰かを出し抜かなければならない過酷なデスレースに置かれていた……まあこの辺は妄想ですが。

 

 鏡の力で巨大化したときに第1形態かソウルになると身構えたのは私だけじゃないはずです。

 

 ところでカービィWii以来久しぶりにプププランドに訪れたことになっていますが、この小説シリーズの設定だと20週年スペシャルコレクションの「もっとチャレンジステージ」や「デデデ大王のデデデでデンZ」はトリプルデラックスやスーパーレインボーよりも後に建造されたのでしょうかね。

 

鏡の大迷宮→Wii→トリデラ→スーパーレインボー→大迷宮のトモダチ→スペコレ&デデデンZ

 時系列はこうかな。まあミニゲームだしどこにあってもいいのか。

 

 まあなんにせよ、ウルトラソードでぶった切られてCROWNEDした件については「自業自得だいい気味だぜ」ということで。

 

 

タランザとセクトニアについて

 セクトニアの永眠後が気がかりでしたが……やはり最愛の人を失った傷は深かったか。それであの鏡に吸い込まれてしまったら、こうもなる。

 

 もしもカービィたちが来なかったら幸せな夢に包まれながら身を滅ぼしたと思います。それはそれで幸福だと言えなくもないですが……ディメンションミラーの強すぎる力を考えればそうもいきませんよね。狂ったタランザがまた他の誰かの望みを断ち切ってしまうかもしれない。

 

 仲が引き裂かれるまでは「セクトニア」と呼びすてにしていたので、かつては対等な関係にあったのでしょう。あるいは身分の差はあれどプライベートでは気の置けない友人だったとか。

 

 「セクトニアをいじめたらゆるさない」「このタランザが守る」。もしや過去のセクトニアは美しくも強くもなく、タランザに庇われる側だったのかも。そして醜く弱い自分から脱するためにあやつりの秘術を用いて……。脱線しすぎるのでここまで。

 

 マホロアが生き延びてセクトニアが永遠なる眠りについた理由は……ソウル第2形態のスペシャルページを見るに彼女自身がそれを望んだからではないでしょうか。元の姿を忘れ、己を呼ぶ声が聞こなくなるほどに身も身体も変わり続け、狂い果てて疲れてしまったのかもしれません。

 

 上述した時系列の通りだとすると、この後なんだかんだあって立ち直りデデデ大王と親しくなったのでしょうか。カービィ達と別れるシーンは、悲しい中にも一筋の希望がある一幕でした。

 

 

エリーヌとクレイシアについて

 マホロアとタランザとディメンションミラーを物語との関連はやや薄く、一種のファンサービスも兼ねた登場でした。とはいえ無駄足というわけでもなく、「友達」というメインテーマを補強し、なおかつマホロアの本音を仄めかす役割を担っています。

 

 エリーヌも結構我の強い性格でしたが、クレイシアはそれ以上。原作に台詞が全然なかったこともありかなり癖の味付けに感じられましたが、割りとすんなりと入ってきました。

 

 全くの素人であるカービィとデデデ大王の作品に感動するような器でなくてなぜか安心。あれだけ天才と豪語していた人の芸術が簡単に折れたら美が廃る。

 それでも「このままでは凡人どものせいで醜い物が蔓延ってしまう。だから天才のあたしが美しい物を作り上げねばいけない」って、ダーククラフターに取り憑かれなくてもラスボスになりかねないぞこの人。やはりドロシアペインシアの系譜か。

 

 彼女の粘土細工はスーパーレインボーを意識したデザインで、原作がリスペクトされていましたね。いや……「彼女たちの」作品でしたか。最後にエリーヌが色を塗って、それで完成。自己主張の強さゆえにぶつかり合うこともあれど、それでも親友同士なんですよね。

 

 

いつもの4人

 今回はデデデ大王の扱いが少々悪かったような。グルメ屋敷のときはまあいつものプププランドだから普段はあんな感じだろうなと気にしなかった、どころか楽しかったのですが、この冒険はゲーム版の大事件の延長線上にあるはずなんですよね。ワガママで困った奴としての側面が表れ過ぎていた気がします。

 

 すっげぇキモイデザインの大王様ロケットとか、ただのゴミにしか見えない粘土細工(メタナイト談)を作るとか、個々の場面はそこまで問題じゃないんですよ。

 迷宮に入ったところでミニマムカービィを吹き飛ばしちゃうのは(結果オーライとはいえ)ちょっとどうかと思ったけど。「友達なんか要らない」は……オレ様が宇宙で一番偉いから対等な友達なんて要らない、とでも解釈しておこう。

 

 傲慢で乱暴な性格や「カービィよりオレ様が活躍してやる」のスタンスはまあ大王らしいんですが、ラッキー以外でイマイチ手柄を立てられず、重要な場面でも格好悪いので口だけになっている感が拭えないんですよね。失態が酷いんじゃなくて功績に乏しい。

 

 物語はマホロアたちでお腹いっぱいなのでコメディリリーフに徹していた、ということでしょうか。これ以前の巻ではもうちょっと格好良いといいな。

 

 

 カービィは食いしん坊ネタはやや控えめ。決めるべきところでは決めてくれるみんなのヒーロー星のカービィですね。怪しみつつも結局マホロアに協力しちゃうとか、懲らしめた後もまた騙されてしまうとか、心底お人好しとされています。

 

 印象的なのはやはり、友情で自分を利用したマホロアに対し「喧嘩する相手も仲直りする相手もいなくて寂しいだろうな」と悲しくなってしまうラストシーンです。1度ならず、2度も欺かれているのにも関わらず、そんな奴にさえ優しくしてしまう。

 

 この話の後になんやかんやでマホロアがポップスターにテーマパークを開くに至ったのだとすると、やっぱり鍵になったのはカービィの底なしの慈悲なのでしょうね。ここまで疑い知らずだと騙すのもバカバカしくなりそう。

 

 

 メタナイトとワドルディは常識人枠ですね。こいつらがいるから他の困ったさんが際立つといいますか。

 マホロアに憤りつつも、カービィが逃がしてしまったことは早々に「過ぎたことは仕方ない」と割りきるのはメタナイトらしい。

 答えによってはただじゃおかないって、物騒なこと言うなこの人。堕落に満ちたプププランドに武力をもって革命を起こそうとしてましたもんね。

 

その他原作ゲームネタ

 まず驚いたのがミニーやミランといった鏡の大迷宮オンリーのキャラが登場したこと。加えて「ミニマムコピー中はホバリング出来ない」「ミランは鏡の扉を隠してしまう」といったところまで拾い上げています。

 名前こそ出てきませんが鏡の大迷宮のエリアも原作にあるものとなっていますね。

 

 エリーヌの部屋にある扉はスーパーレインボーのものと同様。カービィロケットやカービィタンクへの変身もあり、ちゃんと画用紙へのお絵かきで姿を変えています。

 

 タランザのいる大迷宮の最深部を覆っていたイバラのような植物はセクトニアヴァイン由来ですね。タランザがメタナイトを繰糸で操つる展開は毛糸のカービィとトリプルデラックスのミックスでしょうか。

 

 細かい原作ネタが拾われているとオールドファンとしてはかなり嬉しいですね。前述したようにマホロア巨大化でWiiを思い起こさせるのも、オチと合わせて興味深いというか。

 おそらあの鏡がメイドインハルカンドラだとウワサされてることを意識しているのでは。あのまま放っておいたらどうなったんでしょう。バルーンアートよろしく破裂するの?

 

 役立たずかに見えたミニマムで懐に入り込んでからファイターをコピーしてライジンブレイクを浴びせるというのも、原作をオマージュしながらも原作では出来ない、メディアミックスならではのバトルだと思います。ただ攻撃が効かない展開をビートルとスナイパーで2回もやるのはちょっと退屈だったかな。

 

 あとビートルのザコ敵はヘルメホーン(これは中ボス)じゃなくてビートリーなんですけど、ワドルディをチビスケ呼ばわりしてたんで間違えたわけじゃなさそうですね。それと巨大マホロアは吸えるものを全然出さない面倒くさいボスなのかな。

 

もっかいまとめ

 デデデ大王の扱いやでかいマホロア戦のやや退屈な下りにちょっと「ん?」となりつつも、とことんゲス野郎で友達を知らないマホロア、鏡に狂わされてしまうタランザ、衝突しつつも仲睦まじいエリーヌにクレイシアと、ここ数年のキーパーソンたちがゲーム原作に沿ってお話にされていて楽しかったです。

 

 ディメンションミラーとマホロアとタランザを絡めたところも嬉しい。あくまでノベライズのひとつですが、これが公式の後日談かもしれないなと思ってしまうほどに充実しています。

 

 やっぱりカービィは、食いしん坊で脳天気でお人好しで……でもいざってときは格好良いんですよね。

 

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